企業の業績が厳しくなると
「キャリア転進支援制度」と称して
早期退職制度を行うことがあります。
モバイルゲームのコロプラや
LINEヤフーなどが早期退職制度を
行っていますが、そもそもどのような
制度なのでしょうか。
早期退職制度とは、企業が事業の再構築や
人員構成の最適化などを目的として、
定年前に退職を希望する従業員に対して、
通常の退職金に特別加算金を上乗せしたり、
再就職支援を行ったりして退職を促す制度です。
再就職支援を行うという点から
「キャリア転身支援制度」とも
言われています。
退職を促すという観点から
企業側が一方的に解雇するのではなく、
従業員の自発的な応募に基づいて成立する点が
特徴です。
企業の変革を迅速に進めるために利用される
ケースも増えています。
よく似ている制度として希望退職制度も
ありますが、若干の違いもあります。
【類似制度との違い】
| 制度名 | 目的 | 特徴 |
| 早期退職制度 | 人員構成の最適化、事業再構築 | 応募制。優遇措置(特別退職金など)がある。 |
| 希望退職制度 | 主に緊急的な人員削減 | 早期退職制度よりも緊急性が高い場合が多い。 |
| 整理解雇 | 企業の経営状況悪化による人員削減 | 企業側からの解雇。法的な要件が厳格。 |
一般的に言われているメリット、デメリットを
整理してみます。
企業側のメリット
・人件費の削減: 比較的給与水準の高い
ベテラン従業員の退職により、
即効性のある固定費(人件費)削減が
可能です。
・組織の新陳代謝の促進: 組織の硬直化を防ぎ、
若手への役職登用や外部からの新しい人材の
採用により、組織の活性化と技術・ノウハウの
刷新が図れます。
・事業構造の転換: 新規事業への集中や不採算部門の
縮小など、事業の再構築に必要な人員配置の
最適化を比較的迅速に行えます。
・円満な人員整理: 企業側からの解雇(整理解雇)
と異なり、従業員の「応募」に基づくため、
対立を避けやすく、企業イメージへの悪影響を
最小限に抑えられます。
従業員側のメリット
・退職金の大幅な優遇: 通常の退職金に加えて、
特別加算金(割増退職金)が支給されるため、
(会社よります)退職後の生活資金や
再就職活動の資金に活用できます。
・再就職支援サービスの利用: 会社が費用を負担する
外部の再就職支援サービス(キャリアサポート)を
受けられることが多く、次の仕事を見つけるための
サポートが充実しています。
・新しいキャリアへの挑戦の機会: 会社の都合が
良いタイミングで退職できるため、転職、起業、
独立、資格取得など、描いていた
キャリアチェンジやセカンドキャリアの実現に
早期に着手できます。
・失業給付上の優位性(会社都合の場合):
早期退職制度の適用が「会社都合による退職」と
認定され、失業保険の給付が早く開始され
給付期間も長くなる場合があります。
企業側のデメリット
・優秀な人材の流出(モラルハザード):
企業が残ってほしいと考える優秀で市場価値の
高い従業員ほど、特別加算金や優遇条件に惹かれ、
積極的に退職してしまうリスクがあります。
・熟練の技術・ノウハウの散失: 長年の経験で
培われたベテラン社員の技術、知見、顧客
ネットワークなどが一気に失われ、事業継続や
品質維持に悪影響を及ぼす可能性があります。
・残存社員の士気低下と不安: 制度が実施されたことで、
残された従業員が「次は自分の番ではないか」と
不安を感じ、モチベーションやエンゲージメントが
低下する可能性があります。
・割増退職金の財政的負担: 特別加算金を支出するため、
制度実施の初期段階では一時的に大きな財政的負担が
発生します。
従業員側のデメリット
・再就職の難しさと労働条件の悪化: 特に年齢が高い場合、
優遇された退職金を受け取っても、想定よりも
再就職先が見つからない、または給与水準や役職が
大幅に下がるなど、厳しい労働市場の現実に直面する
可能性があります。
・キャリアプランの途絶: 会社の都合で退職することになり、
描いていたキャリアパスや定年までの計画が途中で
断ち切られることによる精神的な負担を感じる場合が
あります。
・自己都合扱いになるリスクと失業給付: 応募制であるため、
会社都合退職とならずに自己都合退職として扱われるリスク
があります。
この点については、会社都合になるためには
「人員整理を目的とし、措置が導入された時期が離職者の
離職前1年以内であり、かつ、当該希望退職の募集期間が
3ヶ月以内であるものに限る」とされています。
早期退職制度、企業側、従業員側の立場に立っても
色々と考えることが多いものですね。
我々も日々精進し、共に成長していきます!
企業基盤の安定を図る。
そのために何をするか、常に考え、行動する。
福井の社労士
シナジー経営社会保険労務士法人
シナジー経営株式会社








