ヒゲで減点査定は違法か?
大阪地裁は、大阪市交通局がヒゲを理由に運転士2人の
人事評価を下げたのは違法という判決を下しました。
大阪市長は控訴する方針を示しましたが、この判決、
自社に置き換えるとどうでしょうか?
(写真は吉村大阪市長)
業務内容やお客様に与える印象などを考慮して
服務規程で身だしなみをルール化し、
一定の規律を保っている会社がほとんどだと思いますが、
ヒゲ、髪型などの自己の外観に関する身だしなみについては
個人の自由であり人権侵害に当たる可能性もあります。
今回の判決で大阪地裁は、
「ヒゲは社会に広く肯定的に受け容れられているとまでは
いえないのが我が国の現状で、身だしなみ基準は一応の
必要性ないし合理性が認められる」
とした一方で、
「ヒゲを生やしていることが人事評価で主要な減点要素
となったのは、人格的利益を侵害するもので違法」
としました。
ここで参考になる判例があります。
郵便事業事件(神戸地裁・平22.3.26)
男性職員の長髪やヒゲが評価の査定においてマイナス材料とされ、
その違法性が争われた裁判です。
判決では、「労働者の服装や髪型等の身だしなみについては、
もともとは労働者個人が自己の外観をいかに表現するかという
労働者的自由に属する事柄であり、髪型やヒゲに関する服務規律の規律は、
勤務関係または労働契約の拘束を離れた私生活にも及び得るものであるから、
そのような服務規律は事業遂行上の必要性が認められ、具体的な制限の内容が
労働者の利益や自由を過度に侵害しない合理的な内容の限度で拘束力が
認められるのである。
そのため、男性職員の長髪及びヒゲを不可とする身だしなみ基準は、
顧客に不快感を与えるような場合にのみに限定して適用されるべきである」
と示され、郵政事業側に損害賠償の支払いを求めました。
顧客に不快感を与えるような場合としてアンケートの提出を行い
客観性を主張しましたが、専門家の視点や短所が列挙されている
として直ちに採用できないとも述べられています。
今回の大阪市交通局の裁判でも郵政事業でも
ポイントはヒゲが顧客にどのような不快感を与えたか、
また主要な人事評価にどう影響を及ぼしている
と言う点です。
仕事ができれば、どのような格好でもいいと言うのは
規律が保たれないですし、社風も乱れてきます。
身だしなみのルールを定め、それに対して指導改善を
認めることは必要です。
一方で個人の人権もある。
今回の裁判、個人的には控訴後の判決を見たいなと言うのが
本音ですが、なかなか難しいところですね。
それでも就業規則等には一定の規律を保たないと
指導もできません。
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