採用は性善説?

採用は「性善説」?

中途採用市場の流動化が進む現在、

企業が直面している最大のリスクの一つが

「採用のミスマッチ」です。

その中でも特に深刻なのが「経歴詐称」です。

先日報じられた大手コンサルティング企業に

おける経歴詐称を理由とした内定取り消しが

有効とされた判例は、会社にとって

重要な教訓となっています。

1. 「経歴詐称」は防げるか

今回の判例では、求職者が職歴の一部を偽り、

過去の雇用先でのトラブルを秘匿していたことが

問題となりました。

面接をする側は「求職者は自身の評価を高めたい」

という前提で面接を行います。

しかし、労働市場が拡大する中で、あえて自らの負の

経歴を隠し、輝かしい経歴を捏造してまで好条件を

勝ち取ろうとする人が一定数存在します。

これを防げない最大の要因は、企業側が

「書面の内容は真実である」という性善説に

基づいた採用選考を行っていることにあります。

2. 「内定取り消し」の法的ハードル

実務上、最も留意すべきは「内定の法的性質」です。

判例上、内定とは「始期付解約権留保付労働契約」

であると解されています。

つまり、会社側は内定を出した時点で労働契約を

結んでいることになり、後からこれを取り消すには

「客観的に合理的」かつ「社会通念上相当」である

という非常に高いハードルを越えなければなりません。

過去には、内定通知後に経歴調査を行い、

判明した詐称を理由に取り消した企業が

「採用前に調べれば分かったことである」として、

無効判決を受けた事例もあります。

つまり、「内定を出してから調査する」のでは

手遅れなのです。

コンサルティング会社の事例が正当と認められた

背景には、雇用契約の条件として

「経歴調査(バックグラウンドチェック)への協力」

を明示的に求めていたという適正なプロセスが

あったことが非常に大きいです。

3. 「3つの防衛策」

① 面接における「深掘り質問」と記録

単に「どのようなプロジェクトを経験したか」を

聞くのではなく、「そのプロジェクトであなたが

直面した最大の困難は何だったか」

「それに対し具体的にどう行動し、

どのような数値結果を残したか」

を詳細に確認しましょう。

 

また、その回答内容を詳細に記録

(または同意を得た上での録音)しておくことは、

万が一の訴訟リスクに対する有力な立証資料となります。

② 「内定前」のバックグラウンドチェック導入

現状、バックグラウンドチェックを導入している

企業は17.4%にとどまると言われています。

しかし、これからは「内定の条件」として、

選考の最終段階で経歴調査を行うプロセスを

標準化すべきです。

特に重要なのは、応募者本人から「提出書類に

虚偽がないこと」および「経歴調査に応じること」

への同意書を取得することです。

これにより、正当な理由として前職調査が可能となり、

詐称リスクを大幅に低減できます。

 

③ コンプライアンスと誠実性の評価

今回の判例において裁判所は、

詐称の事実そのものだけでなく、

経歴を偽ってまで入社しようとする

「不正義性」や「信義則違反」を重く見ています。

職務能力が高く見えても、組織において不可欠な

「誠実性」や「対人関係能力」に欠ける人物は、

入社後にトラブルを招くということです。

採用選考では、スキル以上に

「信頼できる人物かどうか」というフィルターを

厳格に機能させることが必要です。

 

採用のミスマッチを防ぐ。

適正なプロセスと事前調査が、

優秀な人材を守り、企業の成長を支える

土台となります。

 

 

福井の社労士

シナジー経営社会保険労務士法人

シナジー経営株式会社

 

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