『令和8年版 労働経済の分析』要約②

今回は、「2040年に向けた人材不足予測」と、

AI時代を生き抜くために企業と労働者が

取り組むべき「リスキリング(学び直し)と人的資本投資」

の実践策について深く掘り下げます。

1. 2040年の将来予測:理系人材・現場人材の激減と

「大ミスマッチ時代」

経済産業省の推計によると、2040年には人口減少に

伴い就業者数が減少する中で、

スキルの需給ミスマッチが深刻化するリスクが

指摘されています。

 

具体的には、事務職で約440万人の労働力余剰が

生じる可能性がある一方で、以下のような分野で

深刻な人材不足が懸念されています。

 

・AI・ロボット等利活用人材: 約340万人不足

・理系の大卒・大学院卒: 約120万人不足

・現場人材(建設・サービス等): 約54万人不足

我が国の理系分野専攻の卒業生割合は21.8%であり、

OECD平均の24.1%と比較して低い水準にとどまっています。

 

AI技術を活用・保全する専門人材と、

現場の物理的作業を担う実務人材の双方が

不足する一方で、従来型の事務労働者が

過剰になるという構造変化への備えが急務です。

 

2. なぜ日本の「リスキリング」は進まないのか?

こうした不整合を回避するために最も重要なのが

従業員のリスキリングですが、白書は日本の課題を

浮き彫りにしています。

企業へのアンケート調査(JILPT調査)によれば、

リスキリング支援を行っていない企業が

挙げる理由として、以下の項目が上位を占めました。

・「必要性を感じない・どのようなスキルが必要か

整理できていない」(29人以下規模で38.7%、

300人以上規模でも46.2%)

・「労働者に時間を取らせる余裕がない」

(100〜299人規模で49.6%など)

・「どのように取組を支援していいか分からない」

(各規模で24〜28%程度)

また、経営戦略と人材戦略の連携について、

「数年先の事業展開を考慮して必要な人材を

想定し能力開発を行っている」

と回答した日本企業は、300人以上規模で14.2%、

9人以下規模では8.0%に過ぎません。

 

米国の経営幹部の74%が「スキル開発は組織戦略上重要」

と回答しているのと比べ、大きな温度差が存在します。

 

3. 「労使ともに行うリスキリング」がもたらす絶大な効果

しかし、一歩を踏み出した企業には明確な成果が出ています。

リスキリングに取り組んだ企業の7割以上が「効果があった」

と評価しています。

さらにOECDの分析によると、企業からの訓練提供と

労働者の自己学習の双方(労使とも)」が実施された場合、

何も実施していないケースと比べて、

仕事のパフォーマンス改善を実感した割合が

37.0ポイントも高く(83.6% vs 23.5%)、

メンタルヘルスやウェルビーイング、

職場安全性の向上にも極めて高い効果が見られました。

 

まとめ

白書の分析を踏まえ、企業の人事労務担当者・経営者の

皆様へ提案したいアクションは以下の3点です。

 

・「経営戦略」と「人的資本投資」の一体化:

単に研修を受けさせるのではなく、

「自社の数年後の事業にどんなスキル

(AI活用能力、現場技術など)が必要か」

を経営陣と人事が言語化・明示することが第一歩です。

 

・「時間」と「環境」の労務管理的配慮:

従業員が「忙しくて勉強できない」状態を放置せず、

所定労働時間内での研修受講や資格取得支援制度、

業務の省力化による余力創出をセットで

設計することが不可欠です。

 

 

・労使コミュニケーションの強化:

AI導入や配置転換に対する不安を解消し、

「労働者自身のキャリア形成と企業の成長が重なる」

関係を築く対話が成功の鍵を握ります。

AI時代の労務管理は、管理や統制から

「個人の成長と自律を支援する環境づくり」へと

進化が求められています。

 

白書の豊富なデータを道しるべに、

持続可能な組織づくりを進めることがまずは

第一歩となります。

 

 

まずは自社の環境を整理し、何をすべきかを

洗い出しましょう。

 

 

 

福井の社労士

シナジー経営社会保険労務士法人

シナジー経営株式会社

 

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