最近、「ポジティブハラスメント(ポジハラ)」
という言葉をよく見かけるようになりました。
落ち込んでいる人に
「前向きにいこう」
「気持ち次第で何とかなる」
「もっと悪い状況の人もいるよ」
と明るい考え方を押し付けることを指すそうです。
ネットでは「励ましが逆に苦しかった」
という声も多く見られます。
なんでもハラスメントにするなというのが
正直な感想ですが、今日はこの点に触れていきます。
法律上の「ハラスメント」とは別物です
まず整理しておきたいのは、「ポジハラ」は
法律用語ではないということです。
労働施策総合推進法で定めるパワーハラスメントは、
次の3つの要件をすべて満たすものを指します。
・優越的な関係を背景とした言動であること
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
・労働者の就業環境が害されるものであること
上司が「前向きにいこう」と声をかけただけでは、
普通はこの要件に当たりません。
言われた側が不快に感じたとしても、
それだけでハラスメントになるわけではありません。
ここを取り違えると、職場の議論は
どんどん混乱していきます。
「〇〇ハラ」の乱発がもたらすもの
世の中には「〇〇ハラ」が40種類以上あるとも
言われます。
言葉が増えたこと自体は、それまで見過ごされてきた
問題に目を向けるきっかけになりました。
一方で、マイナス面も大きいと感じています。
一つ目は、上司が部下に声をかけにくくなることです。
励ませばポジハラ、指導すればパワハラ、雑談すれば
プライベートへの干渉と言われる。
そうなると、管理職は「何も言わないのがいちばん安全」
と考えるようになります。
現場からも実際にそういう声を聞きます。
でも、関わりのない職場で人は育ちません。
二つ目は、本当に深刻なハラスメントが
軽く扱われてしまうことです。
何でもかんでも「ハラスメント」と呼んでいると、
言葉そのものの重みがなくなります。
人格を否定するような暴言や執拗ないじめに
苦しんでいる人の訴えを軽く、
「またハラスメントか」と受け流されかねません。
これは被害者を守るという本来の目的とは逆の結果です。
それでも、学ぶべきことはある
とはいえ、「ポジハラはなんで生まれたのだろう?」
と考えることで見えてくることがあります。
この言葉が広まった背景には、
相手の話を聞かずに結論だけを押し付ける
コミュニケーションへの不満があるのだと思います。
部下が
「仕事がきつい」「眠れない」
と打ち明けてきたとき、すぐに「前向きに考えよう」
と返すのは励ましではありません。
話をそこで終わらせているだけです。
特にメンタル不調の兆しがある場合、
きちんと受け止めずに流してしまうと、
会社の安全配慮義務の面でも問題になりえます。
大切なのは、ポジティブな言葉そのものを
避けることではありません。
まずは受け止める。
具体的に何が負担なのかを聞く。
そのうえで「一緒にどうするか考えよう」と前を向く。
この流れが大事。
言葉に振り回されない職場づくりを
ハラスメント対策で必要なのは、
法的な基準をきちんと理解したうえで、
相手への敬意を持って関わることです。
「ポジハラ」を恐れて黙り込む職場より、
ときに言葉を選び間違えても、
互いに率直に話し合える職場のほうが健全です。
「ポジハラ」という言葉に振り回されずに、
その奥にある「相手の気持ちを受け止める」
という基本に立ち返りましょう。
福井の社労士
シナジー経営社会保険労務士法人
シナジー経営株式会社








